- テイルズ -




RAGNAROK - 2 -
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未来に逆らえることなどできるのだろうか。
私には解らない。
何故なら一度も逆らおうとしたことがないから。

精霊は世界と共にあり続ける。
その精霊が、未来を変えるなどあってはならない事。
だから私は私が『見た』未来のとおりに行動した。
男からの反撃は気づいていた。
だが・・・
未来を変えてはいけない。
見たとおりに撃たれる。
たとえ、そのせいで私が最も嫌う、人間と機械の国に
連れてこられたとしてもだ。


ウィーンウィーン・・・

オリジンは部屋に響き渡る機械の音で目が覚めた。
体は痛くはなかった。

はじめに目に付いたのは赤い絨毯だった。
どうやら床に寝かされていたらしい。・・・仮にも客だろう私は。
視線を上げると真っ白な壁に、目立たないよう同じ白で
塗られたパイプが這っていた。
それにあわせてコードも何本か張り巡らされている。
天井にはオリジンが2回目に見た『電気の光』があった。
(1回目は調査隊の懐中電灯だ)
眩しい。最悪だ。

ふと、風を感じてみてみると、凝った縁の窓が開け放たれていた。
立ち上がって窓に近づき、外を見た。

オリジンは一瞬目を疑った。

『青』と『白』しかない。

空、海の青と、建物、雲の白。
もっと細かく見ればちらほらと別の色も見えるが(店の看板や旗、茶色の道路など)
ほとんど『青』と『白』しかない。

オリジンの馴染みの色である『緑』はなかった。

・・・そういえば、ここは人工の島だったな・・・。

腹立たしい。
人間はどうしてこうも・・・

ウィーン

さっきからなっている機械の音と違う音がして、オリジンは振り返った。
それは、ドアがセンサーで開いた音だった。

そのドアから一人、青年が部屋に入ってきた。

「おや、起きていたんだね」

青年は楽しそうに笑うと、オリジンのほうへ歩み寄った。

オリジンより少し身長が高い。
長い藤色の髪はもうすぐ床に届きそうだった。
瞳は綺麗な菫色だったが言い表せない冷たさを持っていた。
外見は二十代半ばといった所だろうか。・・・人間ならば。

「・・・お前が事の発端だな」

「ご明察♪僕はリウス=ロズウェルリーズ。
 このトールの全権を握っている。以後よろしく、オリジン」

リウスはオリジンに手を差し伸べたが、オリジンはそれを無視した。

「精霊を拉致するとはいい度胸だ・・・。
 すぐにトレントの森へと返してもらおうか」

ピリッとわずかにオリジンから閃光が現れた。
しかしリウスはそれに動じることもなく、
先ほどと同じように楽しそうに笑っている。

「拉致なんて人聞きの悪い。
 コレが見えないのかな?」

リウスは差し出した手を引っ込めて、逆の手・・・左手を手の甲を向けてかざした。

その人差し指にはダイアモンドの指輪がはまっていた。
どこかで見たことがある指輪だ。
あの隊長が持っていた『ルーンリング』という指輪・・・それだった。

「契約は成立しているよ。君はここから逃げることはできない」

オリジンの眉がピクッと動いた。

「一方だけの契約は契約とは言えない」

「たしかに本来の効果より若干威力は落ちるけどね。
 でも、君を指輪に縛り付けておくくらいはできる」

オリジンは憎らしげにリウスを見た。
パリパリと閃光の走る音が聞こえる。

が、すぐにその力は萎んでいった。

「フン・・・やめだ。
 どうせお前は私に対する対策をとっているだろうからな。
 無駄な力は使いたくない」

リウスは驚いたような動作をするとすぐに笑顔に戻った。

「フフ・・・懸命だよオリジン。
 それじゃあ君の部屋に案内させておこうか」

そういってリウスはパチンと指を鳴らした。
それにあわせて扉から2人の男入ってくる。

「連れて行け」

リウスが、冷めた声で命令すると、男はオリジンの腕をつかみ
今入ってきた扉の向こうへ連れ出そうとした。
オリジンはそれを無理やり解き、リウスの方を向いた。
リウスは真っ赤なイスに座り、笑っている。

「一つだけ答えろ」

「なんだい?」

「お前は何故、私を必要とした」

「それは、どういうことかな」

リウスは一瞬反応すると、それを取り繕うかのように
手を前に組み、顎を乗せる姿勢に変えた。

「戦争に私は使えない。カラップスは広範囲の攻撃だ。
 自軍にも損傷が出る。他の特殊能力である融合の力など更に必要ない。
 ならば一体、何故私は必要なのだ?」

オリジンが目を細める。
リウスも同じように目を細めた。
そしてしばらくの沈黙の後、また笑った。

「・・・そうだね。
 確かに君に前線に行ってもらおう何て思ってはいないよ」

「・・・・・・」

「君を使う場所・・・。
 それに関してはまだ何もいえないね」

「何故だ」

「言ったら絶対怒るから」

怒る・・・か。
どうやら世界平和などには使われないようだな。
解っていたが。

オリジンは「そうか」と返すと、無言で男についていった。

+++

案内されたのはオリジン一人では使い切れないほどの大きな部屋だった。
二人がけ用のソファが小さなテーブルを挟んで向かい合って置いてあり、
奥にはベットが大きな窓の近くに設置されていた。
男達は案内が終わるとさっさと部屋を出て行った。

さて、どうしたものか・・・

このままこの部屋にぼーっとしているのもいいが、
早くこのトールについての情報を集めたい。
オリジンは部屋を見回した。

(ん?)

小さなテーブルに紙切れが1枚置いてあった。
手にとって読んでみるとそれにはこう書かれていた。

『オリジン様
 ようこそいらっしゃいました!
 海に浮ぶ機械の島トールをどうぞご堪能ください』

(ふざけているのか?・・・いるんだろうな)

先ほどあったリウスという男はこういうバカげた事が
いかにも好きそうな男だった。

さらに先を読んでみる。

『トール城案内
 7F:大総統とリウス様の部屋
 6F:上級官(オリジン様の部屋)
 5F:・
 4F:・
 3F:お食事場
 2F:謁見室
 1F:玄関

 BF1:マザーコンピュータールーム
      ※関係者以外立ち入らないようお願いいたします』

パンフレットのような作りだ。
もちろんオリジンは『パンフレット』というものを
今まで見たことがなかったので、そうは思わなかったが。

「・・・マザーコンピュータールーム・・・」

オリジンは小さく注意書きが書かれたBF1に目が言った。

入ってみるか。
元からここの規則に縛られるつもりはない。

オリジンは紙を机の上に戻すと、なんとかなれない機械の扉を潜って
部屋を出て行った。

+++

「フラムベルク〜」

よくとおる男の声が響いた。
声の主と思われる人物は遠くで手をブンブン振り回している。

「・・・!?バカ、ここをどこだと思っている!?」

声に反応した女性は、声の主を見てぎょっとした。
急いで駆け寄り、口に手を押さえつけ近くの部屋に入り込んだ。

男はなんとかその手を解いて女を睨みつけた。

「なにするんですかぁ!!」

「お前のせいだろうがフェン。
 敵の中心地に乗り込んで来て何故そうも堂々としていられる!
 見つかったら私でも助けられないぞ(助けるつもりもないが)」

その言葉を聞いて、フェンはフラムベルクを
馬鹿にしたように見た。

「おやおや、私が何も考えずにあんなことをしたとでも
 思っていらっしゃるんですか?」

フラムベルクは頷いた。

「フラムベルクーーーーー!!」

「はいはい・・・で、一体何のようだ。
 こんな・・・お前の嫌いなオーディーンまで」

フラムベルクはフェンをさらっと流すと
近くにあった椅子に足を組んで座った。
フェンはまだ不服そうだったが、話を始めた。

「トールの事です。最近妙に慌しかった理由がわかりました」

フラムベルクは興味深そうに目を細めた。

「ほう?一体なんだったんだ」

「精霊ですよ!精霊!彼らはどうやら
 精霊の王を捕まえにいったようなんです!」

フェンが興奮気味に話す。
フラムベルクは逆に冷めていた。

「精霊・・・?
 あいつらにそんなものが捕まえられるはずがないだろう」

「それはどうでしょうね。あっちにはアイツもいるんですよ?」

フェンが挑戦的に笑う。結構様になっていたが、
フラムベルクがそれに動じることはない。

「・・・それで?」

「彼・・・オリジンというらしいですが、
 私たちの仲間にしてしまいましょう♪」

フェンが嬉々として話す。

「はぁ?」

フラムベルクはうんざりしている。

「大丈夫ですよv
 彼なら絶対に力になってくれます」

どこからその自信が来るのか・・・
いや、むしろその発想だ。
精霊を仲間に・・・?
まぁ、頼りにはなるだろうが・・・。

ただ。

フラムベルクはちらりとフェンを見た。
フェンはまだ何かを熱心に話していたがフラムベルクの視線に
気がつくとにこっと笑った。

・・・・・・・

不服だ。

フラムベルクの頬はわずかに赤く染まっていた。


To be continued........

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今回は、加筆部分がかなりあります。
リウスの早いご登場とフラムとフェンの会話です。
やっぱり書き直すならちょっと変えなくちゃ面白くないですもんね〜。
フラムベルクも乙女にして(やっぱ女の子だし)三話に続きます!
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2004.8.5