RAGNAROK - 4 -
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オリジンは自室に戻っていた。
マザーコンピューターであった出来事はオリジンを大いに動揺させていた。
フェンリル、オーディーンの者が進入したからではない。
ましてや頭にツノやネコミミが生えていたからでもない。
(あの二人は、どこかで見たことがある・・・)
実際会ったのは今回が初めてだろう。
しかし、オリジンは別の所で二人を見た覚えがあった。
(・・・もしかすると・・・いつか見た未来にあの二人が?)
オリジンはもう一度未来を見ようと思って、やめた。
何故かとてもいやな胸騒ぎがしたのだ。
窓の外はもう夜だった。
トール城の廊下には窓が一つもなく、
オリジンはこの部屋につくまで気がつかなかった。
(もう寝るか・・・)
寝ること自体が久しぶりなオリジンは、
ベッドに入って寝る自分がいかにも人間らしくて苦笑した。
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「オズ」
『まざーこんんぴゅーたーるーむヘヨウコソ。ますたー』
オリジンが部屋に戻った頃、マザーコンピュータールームには新たな来訪者が来ていた。
"マスター"と呼ばれた人物は、満足そうに「うん」と答える。
床まで届きそうな、長い藤色の髪が揺れた。
「それで、僕のPCに緊急信号が入っていたけれど
何かあったのかい?」
『侵入者ガ現レマシタ』
「へえ?やっぱりここに来ちゃったのかオリジン」
『ハイ。ソレカラふぇんりる王国のふぇんびーすとト
おーでぃーん共和国ノふらむべるくモデス』
「ふぅん。あの二人ね」
来訪者はその事実を、驚くどころか
むしろ楽しんでいるようだった。
「オリジンをそそのかしにでも来たのかな?こりないねぇ」
来訪者はふふふと笑うとオズに引き続き調査をするよう命令し、
マザーコンピュータールームを出た。
廊下に彼の靴の音がカツンカツンと響く。
ふと、その音がやんだ。
「そういえば・・・明日は・・・」
来訪者はしばらく考えるとまた笑い、
楽しそうに廊下を歩いていった。
+++
次の日の朝、オリジンは廊下のざわめきで目を覚ました。
機械の音以上に、人間の声や足音が聞こえる。
(・・・何かあったのか?)
オリジンは廊下に出た。
いつもはあまり人が通らないこの6Fも沢山の兵士や上級官が行き交っている。
オリジンはその間をぬって、なんとか階段のところまで出た。
そのまま1階上にのぼる。
かなり癪だがリウスに聞く事が一番この状況を理解するのに手っ取り早かった。
(・・・いないな)
リウスは部屋にいなかった。
いつも部屋にいるので今日もいると思ったのだが。
しかたなくオリジンは今度は下の階に向かうことにした。
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4Fまで降りて、一番この階が騒がしいことに気づいた。
どうやら客が来るらしく、慌しく準備をしている。
(・・・4階。何か特別な部屋でもあったか?)
昨日見たパンフレットを思い出してみたが
4階は特に何も書かれていなかった気がする。
「オッリジ〜ン♪」
いきなり背後から陽気な声が聞こえ、オリジンは即座に振り返った。
ぷに。
「・・・・・・・」
「あははv引っかかりましたね」
オリジンが振り向くと、待ち構えていた背後の者・・・フェンの指が、
見事にオリジンの頬にあたった。
「・・・・・・・・殺す」
「うわわわわわっ;」
オリジンは全身から閃光と負のオーラ(?)を放出させる。
それをうまくかわしたフェンを、更に閃光で追い詰めていく。
4Fの廊下はどんどん黒コゲになっていった(迷惑)
その事態に周りの者が気づいて、急いでオリジンの止めに入る。
しかし、オリジンの閃光の勢いは収まらなかった。
「オリジン、ほら!ほら!周りの人も迷惑していらっしゃいますし
落ち着きましょう!ねっ?;」
フェンも一生懸命オリジンをなだめる。
ふと、オリジンは気がついた。
「・・・そういえば、何故貴様がここにいる?」
「攻撃する前に、まずそれを考えてほしかったですね・・・;」
ようやく鎮静した閃光に、フェンも周りの人間も胸をなでおろした。
「フェン=ビースト様!何事ですか!?」
いつの間にかできていた人だかりから、金髪の白い軍服の青年が現れた。
利発そうで、いかにも軍人といったような顔だ。
「いえいえ、なんでもありませんよ♪」
フェンがスマイルで答える。
はたしてこの黒コゲの廊下のどこが何でもないのだろうか。
軍人も腑に落ちない様子で、フェンをじっと見た。
そしてオリジンを見て、はっとした。
「お前・・・いや、あなたは・・・」
軍人は何かを言いかけてやめ、変わりにフェンに向き直った。
「フェン=ビースト様、ここは一応他国なのですから
あまり目立つような事はなさらないで下さい。
そもそもですね・・・」
「あーはいはい;わかりました。大人しくしてますよ。
それでは、後のことはよろしくお願いしますね。ロディン」
「はっ。了解しました」
ロディンと呼ばれた青年は、フェンに敬礼すると
後ろに控えていた部隊に来るよう命令した。
「ずいぶんと大所帯だな」
「そうですか?」
ロディンについていった兵士はざっと30人程。
全員がロディンと同じ白い軍服を着ていた。
「少ないですよ。私は少し心配ですね。
・・・で、なんで私がここに来たのかわかりました?」
「・・・あれはお前の国の兵士だな。
でも争いをしにきたわけでもない。
・・・ということは、宣戦布告でもしにきたのか?」
「ハズレ〜」
「・・・じゃあなんだ」
オリジンは少しムスっとして言った。
フェンはそれが面白くてたまらなかった。
(笑ったりしたら先ほどの二の舞なので顔には出さなかったが)
「勧誘v
どうですかオリジン、考え直してくれました?」
「いや、まったく」
フェンが一気に沈む。
「・・・ふう。まあ仕方ありませんねぇ。
フラムベルクにも焦るなと言われてますし・・・。
ゆっくりいきましょうか・・・」
「・・・で、結局宣戦布告に来たのだな」
オリジンは今の話がなかったかのように話を進めた。
フェンはそれに少ししょんぼりしたが
すぐに元に戻って話を続けた。
「いえ、そういうわけではありませんよ」
「じゃあなんだ」
「和平条約を結びにきたんです」
「和平・・・。本当か?」
オリジンは意外な言葉に驚いた。
もう何百年も続いているこの戦争がようやく終わるというのか。
「もちろん。まあ、名ばかりですけれどね」
「何?」
「つまりですね〜。条約は結んでも、何ヶ月かですぐに
どちらかの国が破って攻撃しちゃうんですよね。
こんなことがもう何回も繰り返されてます」
フェンはため息をついた。
昨日聞いたとおりフェンは戦争に反対している。
このような事は彼にとってかなり複雑なのだろう。
「終わりはまだ見えない・・・か」
「そうですね」
二人はロディン達が歩いていった方を見た。
廊下の一番奥に『会議室』と書かれた標識がついた、豪勢な扉が見えた。
この扉だけ自動で開くものではないようだ。
「さて、オリジン。いいかげん部屋に行きましょう。
ここでは話せないこともあることですし」
「・・・帰るんじゃないのか?」
「部下を放って帰る上官がいますか!」
オリジンはしぶしぶフェンを自分の部屋に案内した。
To be continued........
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ロディンが初登場です。もうちょっと上官(フェンと…)に
苦労してる感じを出したかったですね〜(笑)
オリジンはもっと冷めた方がよかったか・・・?
まあ、根が優しい人ということで。
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2004.8.18 |