〜 サイレントヴォイス 〜
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著:麻乃ゆうサマ
「…オリジン様ぁっ!!!」
最初に声を上げたのはシルフだった。
その目には涙をいっぱい溜めて、オリジンを必死に呼ぶ。
シルフの腕に支えられているのは、背中に傷を負い、
鮮血を流しながらぐったりと仰向けになっているオリジンだった。
「………………」
ウンディーネは顔の半分を両手のひらで覆い、目を見開いてその光景を見つめていた。
その隣でマクスウェルが言う。
「まずい…。あのトレント、かなりの力を持っておるぞ……」
そのトレントは相変わらず怒り狂い、我を忘れて暴れ回っている。
3人がもうダメかと思ったが、それは次の瞬間に一気に掻き消された。
ずぅぅぅん、という音と共に、トレントがうつぶせに倒れる。
その背中(?)には大きな焦げ跡と小さな火の粉がちりちりと舞っていた。
「この技はもしかして…」
そう言ったウンディーネの見る先には、
炎を全身にまとった炎の精霊…イフリートがいた。
「イフリート!お前が何故ここにおる?」
「何故って…4大精霊は精霊王に何かあったら感知できるようになってるだろ?」
「そういえば…」
マクスウェルがそう言ったとき、地面がぼこぼこと軽く波打ち、
そこからノームが顔を出す。
「ふぅ〜やぁっとついたよぉ〜」
「ノーム…遅いですぅ…」
シルフが涙を拭きながらノームの方へ振り返る。
その時見えた光景に、イフリートもノームも言葉を詰まらせた。
「…お、オリジン…!?なんだ、何でこんな事になってるんだ!?」
イフリートの問いに、シルフはさらに泣き顔になって答える。
「私が…私が悪いんですぅっ…。オリジンさまは私をかばって……」
しゃくり上げるシルフの背中を、ノームが自分の頭でぽんぽんと軽く叩く。
そして、いつもと変わらないのんびりとした口調で言った。
「大丈夫〜。オリジンはこれぐらいで死んだりしないよ〜。
それより〜早く治療して包帯巻いてしないと〜」
「あっ…!そ、そうでした!」
「イフリートさん、オリジン様を運んでいただけますか?」
「しょうがねえなぁ…」
イフリートがオリジンをかついで石版の方へ歩く。
マクスウェル、ノームもそれに続いた。
シルフも立ち上がり、ウンディーネに慰められながら歩いた。
雲で月が隠れ、すっかり暗くなってしまった森の奥へ。
すぅ…すぅ…
森の奥地…漆黒の石版のある場所からは、オリジンの安らかな寝息が聞こえた。
あのあとノームとイフリートが傷によく効くという薬草を採ってきて、
マクスウェルがそれを煎じて塗り薬にし、
傷口にそれを塗りつけ、何とか一息ついたのだ。
その間、シルフはずっとウンディーネの隣で泣き続けていた。
「私のせいで…」と繰り返しながら。
一段落ついた今、イフリートとノームは自分の居住地を守るために帰ってしまい、
この場にはマクスウェル、シルフ、ウンディーネ、そしてオリジンが残された。
「私のせいで…オリジンさまが……っ」
それを聞いていたマクスウェルがふぅ、
とため息をひとつつき、シルフの顔をのぞき込んだ。
「シルフ…オリジン様は大丈夫じゃ。
今まで何度も死に目にあってきたがそれをかいくぐってきたのじゃよ。
そう簡単に死んだりはせんよ」
「…でも…でもぉっ………」
それだけ言ってシルフが空を指差す。
そこでは、さっきまで空を覆っていた雲が、
双月のある一点だけをぽっかりと明けていた。
2つの月。
いつもは違う形だが、今日だけは、2つとも満月。
「これは…!!」
「あなたも、覚えているでしょう?双月が、両方とも満月になった夜のことを…」
静かに、でもはっきりと、ウンディーネが言う。
マクスウェルは頷いただけだった。
この世界の夜空に浮かぶ双月。
その両方ともが満月になったら、
モンスターが凶暴化し、
それで、何かは分からない。
でも、何かが起こる。
もし、誰かがその「何か」の犠牲になったら、その人は…
「その人は…命を落とす。確実に」
シルフが月を見上げて言った。
それは、この地に永く語り継がれてきた話。
記録によると、その話の通りに命を落とした人は実際何人もいるらしい。
「…………………」
オリジンは相変わらず静かに寝息をたてている。
さっきの話が本当なら、いつかはその寝息が聞こえなくなるかも知れない。
「そんなの…嫌………っ」
シルフは、目を思い切りつぶって下を向いた。
ウンディーネとマクスウェルは、ただただオリジンが目覚め、
回復することを祈っていた。
あとがき
2話です。
まだ続くようです(汗)
あ、双月の話については、私の想像でございます。
実際ありません;
こんな悲しい話、ホントにあったら困りますしね。
さてさて、オリジン様がケガをしてしまいました(滝汗)
オリジン様を救う方法はあるのでしょうか…(本人も考えている途中らしい)
…こほん。
ここまで読んでいる人、お疲れさまでした。
埃をかぶった人も多いことでしょう。(何が言いたいんだこいつは)
これを読み終わった後にちゃんと払い落としてくださいね☆
それでわ、次回を気長〜〜〜〜〜〜〜〜〜に、お待ちください。
To be continued........
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サイレントヴォイス第二話です〜Vv
オリジンさん急死に一生スペシャル!!!(違)
どうなってしまうんでしょうか;;ドキドキ;;
第三話、乞うご期待です!!
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