- テイルズ -




〜 サイレントヴォイス 〜
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著:麻乃ゆうサマ

おかしい。
森が異常なほどにざわめいている。
強風の夜でもここまでの騒音はなかったはずなのに…。
「………まさか………」
ふと目前のトレントの森に語り継がれていた話を思い出し、月を見上げた。
満月。
それも、2つともだ。
「………………」
嫌な予感と、最悪の場合を頭に思い浮かべながら
私はトレントの森に一歩足を踏み入れた。


「…そう言えば、昔何かの本で読んだことがあります。
その、満月の夜に犠牲になった人を救う方法…」
「本当ですかっ!?」
ウンディーネはその美しい顔に歓喜の笑みを浮かべた。
今、精霊達を一時全員集合させ(もちろんイフリートやノームも)、
何とかオリジンを救う方法はないのかと話し合っていたのである。
シルフは泣き疲れ、アスカの羽の下で眠っている。
「ええ。確か…。………いえ、やっぱりダメです」
ルナは一度その方法を口に出そうとしたが、軽く首を振って目を伏せた。
「我、納得、否。その方法使う、オリジン、死なない」
「そ〜だよ〜。でもダメなの〜?どんな方法なの〜?言ってよ〜」
「………………」
せがむ精霊達に1度目を向け、また目を伏せるルナ。
少し考えさせてください、と言い放って。

「…そんな…それ以外に方法はないんですか!?」
「残念ながら…ないんです……」
ルナの目には涙が溜まっていた。

―ルナが昔何かの本で読んだ、満月の夜の犠牲者を救う方法。
それは、皆にとってあまりに悲しく、あまりに衝撃的だった。

*****

双月が満月になる夜。
その夜は魔物の血を沸き立たせ、魔物を殺戮へと誘う。
殺戮を求める魔物の犠牲になった者は、
永遠の眠りにつき、二度と目覚めることはない。
―ただし、ひどい方法な上成功確率も極めて低いが、
その者を目覚めさせる方法は1つだけある。

1人のエルフを生け贄に捧げることだ。

*****

「…そんなことでオリジン様が目覚めても、ちっとも嬉しくないです…」

「でも、それ以外に方法はないんだろう?」

「!!!」
精霊達の後ろで、今までその場にはいなかった人物の声がする。
…声の主は、エルフの族長ブラムバルド。
(酒さえ飲まなければ)オリジンのいい話し相手だ。
「…ブラムバルドさま、まさかっ……!!」
いつの間にか起きていたシルフが彼の目前まで行き、
訴えるような目をする。
当の本人…ブラムバルドはシルフから視線をそらし、
横たわっているオリジンを見た。
(やはりこうなったか…)
そんなことを思い、視線をその場に固定してキッパリと言う。
「早い話だ。私が生け贄になればいい」
その言葉を聞いて、精霊達が立ち上がる。
「そんな!絶対だめです!!」
「おぬしがおらんかったら集落はどうなるのじゃ!!」
「そうだ!立場をわきまえろよ!!」
「族長、生け贄なる、我、納得、否」
「生け贄になっちゃだめ〜僕たちが許さない〜!」
口々に反論する精霊達。
そんな彼らを後目に、ブラムバルドはオリジンの元へつかつかと歩み寄る。
そして、振り返り、言った。
「根元の精霊がいなくなったらどうなる?
お前達だけでこの世界のすべての自然を支えきれるのか?
最悪の場合、お前達どころかすべてが消えてしまう。
それを、私1人の命を支払うことで防ぐことが出来るんだ」
彼の目は本気だ。
迷い、怯えなどどこにも存在していない。
精霊達はその気持ちを理解しているのだろうか。
それは定かではない。
だが、もし分かっていたとしても彼を生け贄にするのは…。

森がざわめき、空が鳴く。





あとがき

…まだあるのか。
そうお思いのそこのあなた!
そうです、まだあるんです!!(ヤケ)

さて、今回はブラムバルドさんが出てきましたが…。
まさか自分から生け贄になると言い出すとは(汗)
私としても予想外でした(書いた奴が何言ってる!?;;;)

次回、ついに決断の時です。(でもまだ終わらないと思う(ぉぃ;))
精霊達の出した答えは?
ブラムバルドはどうなるのか?
そして、オリジン様は目覚めるのか!?
(寝不足でついに壊れたか…)


To be continued........

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サイレントヴォイス第三話!!
ぎゃーブラムバルドさんがらみになってしまいましたっ;
ブラムさん登場のとき「酒さえ飲まなければ」ですよVv(笑)
酒乱の称号(?)は伊達じゃないですねっ(謎)
オリさんとブラムさん・・・どうなるんでしょう?;
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