- テイルズ -




〜 サイレントヴォイス 〜
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著:麻乃ゆうサマ

今、この場は…
真夜中、トレントの森の、漆黒の石版の周りを囲む空気は、
暗く、重く、沈んでいた。

オリジンを何とか救いたい。
そのためにはエルフを生け贄にしなければならない。
でもいくら自分から出てきたとはいえ、ブラムバルドを生け贄にするのは嫌だ。
しかしそうしなければオリジンを救うことが出来ない。

そんな思いが皆の心の中で、何度も、何度も渦巻いていた。
「…どうして?」
高い、震えた声が響く。
痛切な、シルフの声だ。
「どうして…どうして!?どうしてこんなに迷わなきゃならないの!?
誰も犠牲にせずにオリジン様を救う方法はないのっ!?」
頭を抱え、涙声で叫ぶシルフ。
その声は森の奥に響きながら消えていった。
シルフ本人も、消え入りそうなほどに震え、小さくなっている。
その様子を精霊達はただ見ていた。
何も言わずに。
…いや、何も言えなかった。
今のシルフに何を言っても無駄なことは、皆分かっていた。
大丈夫だと励ませば反発。
お前のせいだと責めればさらに落ち込む。
そんな答えが待っているだけだ。
分かっていてあえて言うような精霊は…ここにはいない。
ただシルフに向けられる言葉を探しながら、泣き震える彼女を見ていた。

*****

「…答えは出せたか?」
翌朝、一晩中考え続けた精霊達に向かって、ブラムバルドが言った。
「はい」
彼の言葉に皆の代表として応えたのはシルフだった。
「…もう私達は何も言いません。あなたの好きなようになさってください」
突き放したような言い方だが、その声にはどこかに哀しさがあった。
その言葉を聞いたブラムバルドは分かったと頷き、
足下で眠っていたオリジンを石版前まで運ぶ。
シルフは皆に解散の指示を出し、
ブラムバルドに向かってぺこりとお辞儀をし、その場を去った。
「…さて、生け贄の儀式のやり方は…」
もってきた(昔ルナが読んだという)本を開き、
「生け贄儀式」という見出しのページを開いた。
それの通りに魔法陣を描き、その中央に立つ。
後は呪文を唱えて生死を司る神を呼び出し、その神に望みを言うだけだ。
「……………………」
小声で呪文を唱え始める。

『私を呼びだしたのは…お前か?』
呪文を唱え終わったブラムバルドの前に、
項のところで無造作に束ねてある紫紺の髪をなびかせた、
生死を司る神…クロムが現れた。
その冷たい氷色の目が、ブラムバルドを静かに睨む。
「そうです」
『…その精霊の王を救うために、自ら生け贄になろうというのだな…』
どうやらすべてお見通しらしい。
「はい。精霊の王はこの世に必要ですから」
『…良いのだな?』
「…1つだけ…この者の目覚めた姿を、一度だけ眼中に押さえておきたいのですが」
『それぐらいならまあいい。…ただし、一度見たらその場でお前は消滅だ。いいな?』
「覚悟は出来ています」
『…………………………』
クロムの両手のひらに白い光の粒子が集まる。
それは見る見るうちに大きくなり、やがて同化して1つになった。
『精霊の王オリジンよ、ここに目覚めよ!』
声と同時に光の玉がオリジンを包む。
その光景は目を焼くほどに眩しく、ブラムバルドは目を閉じて時を待った。

しばらくして、やっと光が止んだ。
ブラムバルドが目を開け、オリジンの方を見る。
「……………」
ぴくりと、オリジンの体がかすかに動く。
と、その時だった。

「今だっ!!!」

イフリートの声と共に辺りの草むらから一斉に精霊達が飛び出す。
ブラムバルドはあまりに突然の出来事にその場に立ちつくし、
クロムも驚愕の表情を浮かべた。
が、それはすぐに掻き消され、クロムの顔は鬼人のように険しくなった。
『なんだ、お前達は!!儀式を邪魔するつもりか!?』
「そうです!!オリジン様が目覚めた直後、そしてブラムバルド様が消える寸前に
あなたを封印してしまえば誰も死なずに済むのですから!!!」
オリジンを他の場所へ移動させるウンディーネとノームを後目に、
シルフが手に持っていた首飾りをクロムの目前に掲げる。
『!!そ、それは!!!』
その銀の装飾のついた白い宝石の首飾りを見た瞬間、クロムの表情に怯えが走った。
「分かりますよね?あなたを封印するための首飾りです!!」
そのセリフが終わるか終わらないかのうちに、
クロムの姿が金の粉になり、首飾りに吸い込まれていく。
そして、神が消えた直後…、
その場には沈黙が残された。





あとがき

4話ですねぇ…。
いつまで続くんでしょうか…。(遠い目)

本編のほうですが、ずるいですよ、精霊達(いきなり何を)
でもあれしか方法ないようですしねぇ…。
ま、結果オーライとゆー事で。
…でも、人生一筋縄ではいかないのですよ…。(意味深)

あ、クロムは私のオリキャラです。
そうなんです、オリキャラなんです。(何)

…さて、次回、ついにオリジン様が目覚めます。
でも、その喜びはいつまで続くのやら?(さらに意味深)

でわでわ、次回をお楽しみに。


To be continued........

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サイレントヴォイス四話ですよ!はやいですね〜(お前が遅いだけ)
なんとか2人無事(?)助かりました♪よかよか。
オリジンさんのために死を覚悟したブラムバルドさん、
かっこいいですね〜〜Vv(>▽<)
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